私の学生時代(1980年代)は家庭用血圧計がまだ普及しておらず、医療関係者のあいだでも家庭で血圧を測るという発想自体がなく、白衣高血圧症はほとんど認識されていなかったと思います。身体に装着する24時間血圧計(ホルター血圧計)も当時はなかったはずです。あれば、私も必ず計測されたはずなので。
私の場合は腎臓病やホルモン異常を疑われ、大学病院を紹介されて様々な精密検査を受けました。その結果どこも異常が見つからず、原因不明の本態性高血圧とされました。そしてクリニックでの降圧剤投与が始まったのですが、これが本当に正しかったかどうかは疑問です。
現在は家庭用血圧計が普及していますので、まずは自宅で家庭血圧を計測することから始まると思います。日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2014」によると、高血圧の診断基準は次のとおりです。
診察室血圧 | 家庭血圧 | |
高血圧診断 | 140/90mmHg以上 | 135/85mmHg以上 |
病院や健康診断会場で測定した血圧(診察室血圧)と家庭血圧は5mmHgしか違いません。つまり、普通の人はどこで測ってもあまり違いはないのです。逆に普段は高血圧なのに、病院のほうが落ち着いて血圧が下がる「仮面高血圧」の人もいます。「高血圧治療ガイドライン2014」では、白衣高血圧症は次のように定義しています。
診察室血圧が収縮期血圧140mmHgかつ/または拡張期血圧90mmHg以上で,家庭血圧が収縮期血圧135mmHg未満かつ拡張期血圧85mmHg未満あるいはABPMでの24時間平均血圧が収縮期血圧130mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満である場合,白衣高血圧と定義される。
ABPMとは、24時間血圧計による「24時間自由行動下血圧測定」(Ambulatory Blood Pressure Monitoring)のことです。夜間も含めての24時間平均なので低めに設定されていますが、正確には昼間平均135/85mmHg未満、夜間平均120/70mmHg未満です。
私の場合、20代~30代では、診察室血圧は特に収縮期血圧が高くなりました。家庭血圧を測るようになると全く正常で、自分は白衣高血圧症だと確信しました。こうした典型的な白衣高血圧症の場合、家庭血圧を測ると一目瞭然ではないかと思います。
診察室血圧 | 家庭血圧 | |
私の20代~30代平均値 | 160/90mmHg | 125/75mmHg |
白衣高血圧症の特徴として、その場の雰囲気に慣れると血圧が安定してきます。年1回の健康診断では絶対にダメですが、クリニックに隔週で通うようになり、主治医との信頼関係が生まれてくると、家庭血圧との差が狭まっていきます。完全にメンタルに左右されていることがわかります。
学生時代から白衣高血圧症の私にとっては意外ですが、「高血圧治療ガイドライン2014」によると、白衣高血圧症の頻度は高齢者で増加するそうです。血圧測定が苦手な人は最初から苦手じゃないのかと思うのですが、これは不思議です。
白衣高血圧は診察室血圧で140/90mmHg以上の高血圧と診断された患者の15%~30%がこれに相当し,その頻度は高齢者で増加する。
私のように先天的に白衣高血圧症の方は、家庭血圧をきちんと測定し、記録を残すことが肝心です。医師を納得させるため、家庭用血圧計を診察室に持参して測り、診察室で使用している医家用血圧計の測定結果と比べるとよいでしょう。