腎デナベーションと白衣高血圧症

By | 2017年3月21日
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先日、新聞に腎デナベーションの治験者募集の全面広告が出ているのを見ました。腎デナベーションとは、本態性高血圧の原因と言われる交感神経を、足の付け根から入れたカテーテルで焼いてしまうもの。東京女子医科大学高血圧・内分泌内科の解説がわかりやすいです。

この治療法は米国の医療機器メーカー・メドトロニック社が開発したもので、日本では2012年から上記の東京女子医科大学を含む11病院で治験を開始しました。

インナビネット「日本メドトロニック,「腎デナベーションシステム」の治験を日本で開始~治療抵抗性高血圧患者に対する新たな治療選択肢としての承認を目指す~」

先行してこれを報じた日本経済新聞電子版(共同通信配信)には、興味深い記述があります。

 海外の過去3年の実績では副作用はほとんどなく、効果が続いているという。専用の装置が公的に承認された欧州を中心に4千例以上が実施された。約10%の患者には効かず、その理由が分からないことや、効果があった場合でも薬を完全にはやめられないといった課題がある。

(中略)

 この交感神経を外科手術で切断すると血圧が下がることが1930年代から知られていたが、別の神経も傷つけてしまうことがあった。血圧が下がる詳細な仕組みは分かっていないという。

この10%の人は、白衣高血圧症ではないでしょうか。

日本メドトロニック社は、その後「計画していた降圧効果が得られなかった」として14年に治験を中断してしまいました。こちらがリリースですが、要は比較するために偽手術を施した人と有意差がなかったということです。次のブログがとても詳しいです。

めがね食堂 ruokala silmälasit「高血圧カテーテル治療ー>治験中止!」

やはり、血圧は精神状態が大きく影響するわけで、交感神経がすべてではないということですね。偽手術にもプラセボ効果があるということでしょう。

現在腎デナベーションの治験者を募集しているのは、米国の別の医療機器メーカー・ReCor Medical社のシステムを16年に契約した大塚ホールディングス配下のJIMRO社です。

大塚ホールディングス/ニュースリリース「大塚ホールディングスと米国ReCor Medical、日本とアジア地域において超音波腎デナベーション治療デバイスの共同開発・商業化契約を締結 」

参考までに、募集中の治験者情報です。

臨床研究情報ポータルサイト「超音波腎デナベーションシステムを用いた治療抵抗性高血圧を対象とした臨床試験」(患者様・ご家族など一般の方向け)
臨床研究情報ポータルサイト「超音波腎デナベーションシステムを用いた治療抵抗性高血圧を対象とした臨床試験」(医療関係者の方向け)